「塗り絵」と聞くと、子供の遊びを思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれど、実はいま、“大人の塗り絵”という言葉を耳にすることもあり、大人が楽しむ趣味のひとつとして関心が高まりつつあるようです。
その背景には、脳の活性化に役立つという考え方があります。近年の研究では、塗り絵のような芸術活動が、認知機能を改善する可能性があることがわかってきました1)。
 

塗り絵の利点

認知症の予防には、脳を意識的に使うことが大切です。塗り絵をするとき、私たちは「どの色にしよう」「はみ出さないように丁寧に」といった思考を無意識に行います。こうしたちょっとした集中や判断の積み重ねが、脳をほどよく刺激してくれるのです。
また、色彩を選ぶ過程で、記憶や感情が呼び起こされることもあります。昔好きだった色や、思い出の風景を思い浮かべながら塗ることで、記憶力にもよい影響があると考えられています。
 

人とつながる「きっかけ」にも

塗り絵は一人でも楽しめますが、誰かと一緒に取り組むことで会話や笑顔が自然と生まれます。
「それ、上手だね」「この色きれい!」そんな何気ないやりとりが、社会とのつながりを保つ助けになります。地域のサロンや高齢者施設などでも、塗り絵を取り入れた交流の場が増えています。

このような場に足を運び、活動に参加すること自体が、社会的なつながりを深め、心身の健康維持に寄与する大切な機会となるでしょう。
 

まとめ

塗り絵は、特別な道具や知識がなくてもすぐに始められる、手軽でやさしい認知症予防法の一つです。
芸術と聞くと「自分には難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、まずは塗り絵のような、どこか懐かしく親しみあるものから、日常に取り入れてみるのはいかがでしょうか?
「こんなんだったなぁ」と思い出にひたりながら、意外と楽しい時間を過ごせるかもしれません。そして、そういう時間こそが心と脳によい刺激を与えてくれることでしょう。

参考サイト:
*1) 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック(ウェブ版)」
https://www.ncgg.go.jp/dementia/mci/(2025年4月28日アクセス可能)