
今回は、介護について、FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価)という指標からみてみましょう。
FIMは、セルフケア・移動・コミュニケーションなど、生活のさまざまな動作がどれだけ自分でできるかを点数で示す指標です1)。
介護やリハビリの現場で使われ、運動項目は13項目、認知項目は5項目で構成されています。

日常生活の中に認知項目がある理由は、認知機能が身体の動作に影響を与えるためです。

各項目は1〜7点で評価され、「どの動作が自立していて、どの動作に手助けが必要か」 を記録していきます。
たとえば「歩く」という動作でも、
・自分で問題なく歩ける完全な自立
・ゆっくりなら歩ける
・見守りだけで歩ける
・手を添えれば歩ける
・介助があっても歩けない
と、人によってできること・できないことには段階があります。
FIMの良いところは、「いまの状態」を数字で把握できることだけではありません。
リハビリの成果などを、時間の経過とともに追跡することも可能です。
さらに、評価をもとにこれからの生活をどう支えていくかを考えることもできます。
たとえば――
・食事は自立しているけれど、トイレや入浴が難しい
・歩行は安定しているのに、衣服の着脱がうまくいかない
・身体の動きは問題ないが、会話や理解の部分でサポートが必要
こうした項目ごとのちがいが分かることで、リハビリの重点や介護のポイントが明確になります。
FIMは「単なる評価」ではなく、介護を受ける人も支える人も、生活の質をより良くしていくための「共通のものさし」と言えます。
生活の現状を数値で把握し、工夫によって暮らしやすくすることを考える手がかりになるのが、FIMの魅力です。
【参考】
*1) 厚生労働省. 日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184198.pdf(2025年11月12日アクセス可能)